しきゅうたいがん子宮体がん
子宮体がんとは?
子宮体(しきゅうたい)がんは子宮がんの一種です。子宮の内膜にできるがんを子宮体がんと呼びます。そのため「子宮内膜がん」ともよばれます。
子宮頸がんがウイルスの感染によって発症するリスクがあることに対し、子宮体がんは女性ホルモンの分泌が影響しておこります。子宮内膜増殖症が進行して子宮体がんになります。
子宮体がんは、「子宮がん」の種類の1つで、別名「子宮内膜がん」とも呼ばれます。
子宮体がんは子宮の内側にある子宮内膜でがん細胞が発生する病気です。もう1つの子宮がんは「子宮頚がん」といい、子宮の入り口である子宮頚部、子宮上皮にがん細胞ができます。
二つの子宮がんの違いは、がん細胞ができる場所だけでなく、根本的な原因が違うことです。子宮体がんの原因はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が影響しますが、子宮頚がんの原因はヒトパピローマウィルスに感染することで発症します。
診療する場合は婦人科を受診します。問診内容を把握しておくとより正確な診断を助けます。がんの進行具合を測る必要があるため、エコーやCTなどの画像診断による検査が実施されます。
原因になっていると考えられているのはエストロゲンという女性ホルモンの一種の影響と考えられています。また肥満になるとエストロゲンを分泌しやすくなるため、子宮体がんになりやすいとされています。
大腸がんの家族歴がある場合も注意が必要です。
子宮体がんの症状
多い自覚症状は不正出血(月経とは関係のないもの、閉経後にも起きるもの)です。他には排尿異常、下腹部の痛み、おりものの異変などがあります。
1.出血
不規則で異質な出血をする「不正出血」は患者さんが自覚できる子宮体がんの初期症状である。具体的な症状は以下のようなものです。
・月経とは無関係な出血が出る
・正常な月経の出血であっても量が多い
・おりものに血が混ざる
・閉経後に少量ずつ、長期間続く出血がある
2.その他の症状
・月経不順
・下腹部の痛み
・排尿時の痛み
子宮体がんの診療科目・検査方法
月経とは関係ない不正出血があれば婦人科、産婦人科を受診するのが望ましいです。
子宮内部に細い検査器具を挿入して細胞を採取する子宮内膜細胞診をおこないます。またがん細胞を摘出して細かく確認する細胞診や組織診などをおこなうこともあります。
子宮体がんかどうかを診てもらうなら、婦人科系の病院が望ましい。最寄りの産婦人科、婦人科で検査、治療を受けましょう。
子宮体がんは早めに発見、治療することで十分根治できる病気です。手術によって妊娠できなくなる可能性もあるが早めに病気に気づき、考える、相談できる時間をつくり納得できる治療をおこなえるようにしましょう。
生理周期中の月経不順や異常な出血に気づいたら、すぐ病院へ行く心構えが必要です。地域の保健所が案内している定期的な子宮頚がんの検診もしっかり受診すること重要です。
受診のタイミング
出血の状況を把握しやすいため、生理の時期を避けましょう。妊娠している、妊娠の疑いがある場合には検診を避けた方がいいです。
X線を使用した検査が受けられないため、受診する日を改めましょう。広げやすいスカートやすぐに履ける靴を選んで、スムーズに検査がおこなえるようにしましょう。
問診内容
病院で検査を受ける際に、以下のような内容を問診で答えられるようにしておくとスムーズに検査できます。
1.月経周期、最終月経
医師が月経周期を把握します。月経周期の時期によって細胞の見え方が違ってくるため、この情報は重要です。
2.出血、おりものの状態
不正出血があること、出血量が多いこと、おりものに血や膿が混じっていると子宮体がんの疑いがあります。
3.性交経験の有無
子宮体がんの検査と同時に子宮頚がんの検査もおこなう目安となります。内診に対する患者の抵抗感も確認します。
4.婦人科系の病気経験の有無
5.妊娠、流産、中絶歴
6.ホルモン剤の使用歴
7.初経、閉経年齢
他の病気の可能性と、子宮体がんになりやすい状態なのかの判断材料となります。
8.アレルギーの有無
検査で使用する造影剤のアレルギーがある人に対して配慮します。
内診
膣に指を入れて触診したり、腟鏡を入れて出血やおりものの状態を確認します。子宮体がんだけでなく、子宮筋腫や子宮内膜症といった他の病気も見つけられます。
がんの疑いが強い場合は、肛門から直腸診をおこなうことがあります。これは直腸から診た方が子宮の大きさ、形、卵巣や卵管の状態が分かりやすいためです。
細胞診、組織診
子宮体部の細胞を専用のブラシでこすって採取し、検査する方法です。採取する際、多少の痛みや出血がある場合があります。
細胞をとったら顕微鏡で観察し、がんの前兆がないかをみます。
がんの疑いがある場合は、より広範囲の組織を削って検査する「組織診」をおこないます。
検査結果の分類は、「陰性」「偽陽性」「陽性」の3段階で結果が示される分類と、子宮頚がんの結果で使われる「クラス」での日母分類の2種類あります。「クラス」は進行具合を示す「ステージ」とは違います。分類の内容は下の表の通りです。
1.子宮頚部細胞診 日母分類
・クラスⅠ
異型細胞を認めない。上皮は正常
・クラスⅡ
異常細胞を認めるが良性である。良性異型上皮、炎症性異型上皮などが確認される。
・クラスⅢa
悪性を少し疑うが断定できない。異形成 軽度・中等度異形成が確認される。5%程度に癌が検出される。
・クラスⅢb
悪性をかなり疑う。高度異形成が確認される。50%程度に癌が検出される。
・クラスⅣ
極めて強く悪性を疑う。上皮内癌が確認される。
・クラスⅤ
悪性。浸潤癌(微小浸潤癌を含む)
2.子宮内膜細胞診 判定基準
・陰性
細胞異型ならびに構造異型を認めない。腺管構造が性周期に一致している。正常内膜 5%程度に癌が検出される
・疑陽性
細胞異型ならびに構造異型を認めない。腺管構造が性周期に一致している。炎症性変化などの非腫瘍性病変、子宮内膜増殖症、癌、肉腫。10%程度に癌が検出される
・陽性
癌由来と判定される細胞がみられる。子宮内膜の癌。80%程度に癌が検出される
子宮鏡検査
子宮体の内部に内視鏡を入れて、直接子宮内の状態を観察します。性行為の経験がない人は少し痛みを感じる可能性があります。
超音波(エコー)検査
膣に超音波を出す器具を入れて、超音波の反響で画像を表示する検査です。子宮体内部の様子を観察し、腫瘍や周りの臓器の様子を把握します。
CT・MRI検査
CTはX線を用いて、MRIは磁気を用いて子宮周辺の画像を撮影し、がん転移の状態を確認します。
造影剤を使う際にアレルギー反応が出る場合があるため、アレルギー持ちの人は検査できないことを申告するか、問診であらかじめ伝えましょう。
子宮体がんの原因
卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)が大きく関係しています。卵胞ホルモンの刺激により子宮内膜の発育が促され、子宮内膜増殖症という前がん病変の段階を経て子宮体がんが発生します。
エストロゲン
エストロゲンは女性ホルモンの1つで卵胞(らんほう)ホルモンともよばれます。
エストロゲンの分泌される過程は、まず脳の下垂体(かすいたい)から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌されると卵巣のなかの卵胞が成長を始めます。その卵胞から「エストロゲン」が分泌され、受精卵が着床するのに必要な子宮内膜が厚くなっていく仕組みです。
子宮体がんは、そのエストロゲンが多く、長期的に分泌されることで発症すると考えられています。
子宮体がんになりやすい人
1.肥満体型の人
肥満の人は当然脂肪細胞を多くもっています。
そして、脂肪細胞にはエストロゲンを分泌する働きがあるため、子宮体がんの可能性を高めることになります。
2.妊娠、出産経験がない
妊娠、出産経験がないとエストロゲン優位の期間が長く、子宮体がんのリスクが高くrなります。
これにはもう1つの女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌量が関係しています。プロゲステロンは、受精卵が子宮内膜に着床しやすいように環境を整える働きがあります。そのため、妊娠するとプロゲステロンの分泌量が増え、子宮体がんになるリスクが押さえられます。
3.初経が早い/閉経が遅い
妊娠経験がない人の理由と同じく、エストロゲンの優位な期間が長く続くため、発症のリスクが高まります。
4.エストロゲンを補充する薬を投与した経験のある人
エストロゲンのみが増えた状態となってしまい、子宮体がんや乳がんになるリスクも高くなります。
5.大腸がんの家族歴がある人
大腸がんになった人が家族にいる場合は、リンチ症候群を患っている可能性があり、子宮体がんだけでなく、胃や小腸といった部位のがんに遺伝的になりやすい人もいます。
リンチ症候群は遺伝性大腸がんの1つです。
大腸がんの若年発症、異時性あるいは同時性の大腸多発がんおよび多臓器がんの発症を引き起こします。
リンチ症候群の家族歴がある人は8割が生きているうちに大腸がんにかかるといわれています。また、2~6割の人は子宮体がんを発症します。
子宮体がんの予防・治療方法・治療期間
病気の進行具合によりますが、子宮、卵巣・卵管、リンパ節を摘出するのが一般的です。保険適応で腹腔鏡手術をおこなう施設もあります。必要に応じて、術後に抗がん剤治療や放射線治療をおこないます。
1か月から1年程度、その後、数年かけて定期的に通院をおこない経過観察が必要です。
子宮体がんの治療はがんの進行度合い(ステージ)に合わせて選択します。手術でがんの摘出が基本となります。
がんが進行している、転移していて摘出が難しいなどの場合はガンマ線などの放射線治療や化学療法をおこないます。
子宮体がんの病期(ステージ)区分
子宮体がんの進行具合は、病期(ステージ)区分で説明されます。
そのステージ区分はUICC(国際対がん連合)による TNM 分類と、FIGO(国際婦人科産科連合)による臨床進行期分類の2種類あります。国際的に使われているのはTNM分類であり、日本ではどちらも使用しています。がんの進行具合で評価がかわります。
TNM分類はT「原発腫瘍の拡がり」、N「所属リンパ節転移の有無と拡がり」、M「遠隔転移の有無」をそれぞれ意味します。
以下にTNM分類とFIGO分類の分類ごとの状態を解説します。()内にFIGO分類を記載しています。
・TX
原発腫瘍が評価できないもの
・T0
原発腫瘍を認めないもの
・Tis
上皮内癌
・T1(Ⅰ期)
癌が子宮体部に限局するもの
・T1 a(ⅠA期)
癌が子宮筋層1/2 未満のもの
・T1 b(ⅠB期)
癌が子宮筋層1/2 以上のもの
・T2(Ⅱ期)
子宮頸部間質浸潤のあるもの
・T3 /N1(Ⅲ期)
癌が子宮外に広がるが小骨盤腔をこえないもの,あるいは所属リンパ節転移のあるもの
・T3 a(ⅢA 期)
子宮漿膜ならびに/あるいは付属器を侵すもの
・T3 b(ⅢB期)
腟ならびに/あるいは子宮傍組織へ広がるもの
・N1(ⅢC期)
骨盤リンパ節転移ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
・N1(ⅢC1期)
骨盤リンパ節転移のあるもの
・N1(ⅢC2期)
傍大動脈リンパ節転移のあるもの
・T4(ⅣA期)
膀胱ならびに/あるいは腸粘膜に浸潤のあるもの。胞状浮腫のみでT4へ分類しない。生検で確認すべきである。
・M1(ⅣB期)
遠隔転移のあるもの
臨床病期に合わせた治療方法
子宮体がんの治療法は、がんの進行具合で変わります。方法が異なる段階はFIGO分類でⅠ~Ⅱと、Ⅲ~Ⅳ期に当たる段階です。
Ⅰ~Ⅱ期の子宮体がんの治療は外科手術をおこなうのが一般的です。しかし、若年の女性には妊孕能(にんようのう)( 妊娠する能力)を残したいという人がいます。
妊孕能を維持したいという人に対しては、初期の子宮体がんの状態の場合に限りホルモン治療をおこなうことも可能です。ここで示す初期の子宮体がんというのは、子宮内膜にのみがん細胞が存在している状態です。
治療法の区分は以下のようになります。
1.手術(外科療法)
がんを切除します。転移する恐れがある部位も、必要に応じて範囲を広げて手術することで、転移を防ぐ方法です。がんを根治できる可能性があります。デメリットとして後遺症が出る場合があります。また子どもをつくれなくなる可能性があります。
子宮体がんの手術は主に以下の方法がある。
・単純子宮全摘出術および両側付属器(卵巣・卵管)切除術
腹部を切って(または、腹腔鏡下手術で2cmほどの範囲を切って)がん細胞が浸潤、転移するおそれのある子宮や卵管、卵巣までを切除、すべて摘出する手術です。
進行具合によっては骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清(リンパ節を取り除くこと:かくせい)を行う場合もあります。
・広汎性子宮全摘出術
単純子宮全摘出術よりも広範囲の子宮、卵巣、卵管、膣、子宮周囲の組織を含めて切除する手術。
こちらも進行具合で腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合があります。
・準広汎子宮全摘出術+卵巣・卵管切除術
子宮、卵管、卵巣および子宮を支える部分(子宮と卵巣、卵管がつながっている管まで)とリンパ節を切除する手術です。
準広汎子宮全摘出術のみは、単純子宮全摘出術と広汎性子宮全摘出の中間的な手術ととらえることができます。
・腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)
近年では子宮体がんの腹腔鏡下手術が保険適応になりました。
腹腔鏡下手術はお腹に0.6~2cmほどの穴を空けて細長い器具を挿し混んで治療する手術です。
お腹を切開しておこなう手術よりも出血や傷が少なく済みます。ただし、手術の難易度が上がるため、よく医師と相談してから腹部切開をするか腹腔鏡下手術をするかを決める必要があります。
2.放射線治療
高エネルギーのX線、ガンマ線を照射してがん細胞を小さくする治療法です。
膣に器具を入れて放射線を照射する方法や、針状のものを刺して照射する方法があります。がん細胞を小さくし、子宮体がんの進行を抑制します。主に手術後の再発を防ぐためや、手術できないときにおこなわれます。これにより進行や再発を遅らせることができますが、根治はできません。
副作用として照射した部位の炎症や身体のだるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球減少、直腸炎、膀胱炎、小腸の閉塞(塞がること)、下痢などが起こります。また、数ヶ月、数年後に合併症を引き起こす可能性もあります。
3.化学療法(抗がん剤治療)
抗がん剤による化学療法はがんの代表的な治療法です。内服や点滴投与の手段があります。
月1回や週に1回と、がんの進行に応じて回数は変わります。がん細胞を攻撃するが、同時に正常な細胞も攻撃するため、免疫力が低下します。がんによる症状をやわらげ再発を妨げる方法です。
副作用は以下の通りです。
・毛髪が抜ける
・口内炎
・吐き気
・下痢
・白血球、血小板の減少による免疫力低下:感染症にかかりやすくなる
4.ホルモン療法
再発の危険性の高い症例に対する補助的な治療として行います。
化学療法が不十分な場合や、体力が低下した状態で化学療法を行うことができない場合に、化学療法にかわる全身的治療として行われることもあります。
がんの増殖を抑えるために、黄体ホルモン剤を投与します。黄体ホルモン剤はプロゲステロンのことです。これを投与されることで子宮体がんを遅らせる働きがあります。
子宮を残して治療したい、ステージがⅠ期の人が希望することも可能です。化学療法が不十分な場合や、体力が低下した状態で化学療法を行うことができない場合におこなえる治療法です。
デメリットとしては血液が固まりやすくなって血栓(血液のかたまり)ができる「血栓症」(けっせんしょう)という副作用が起こることがあります。
予防
1.生活習慣の改善
たばこは、あらゆるがんの原因として考えられます。自分が喫煙するだけでなく、他の人が吸っているものの副流煙にも注意が必要です。喫煙者は禁煙をする強い意志を持つことが重要です。
飲酒は子宮体がんとの関連性があまりないとされており、大量に飲まなければ問題ありません。
しかし、中年男性の喫煙者が毎日アルコールを4合以上飲むとがんによる死亡率が3.6倍に上がるデータがあります。女性にも同じようにアルコールが作用することも考えられるため、喫煙者は飲酒も控えるように心がけた方がよいでしょう。
がんの発生原因として、ストレスもよく挙げられます。十分な休息とリラックスできる時間をつくって、解消する努力が必要です。
・十分な睡眠
・お風呂で湯船にゆっくりつかる
・適度な運動
ジョギングやランニングといった、気軽におこなえて全身を使う運動がストレス解消に期待できる。
・趣味を楽しむ
自分のしたいことを自由にすることでストレスを発散しましょう。共通の趣味を持つ友達と交流することでもかまいません。
2.栄養バランスを考えた食事
脂肪分が高い食事、高タンパクの食事は控えましょう。脂肪細胞はエストロゲンを分泌し子宮体がんの発症を促進させてしまいます。
また、ホルモンバランスを取るために大豆やココアといった食品でイソフラボンを多く取ることも控えましょう。イソフラボンはエストロゲンに似た作用を起こすため、むしろ子宮体がんの発症率を上げてしまいます。
プロゲステロンを直接増やせるような食品はないため、栄養バランスのとれた食事をして、身体のホルモンバランスを整えることが大切です。
3.低用量ピルを服用する
低用量ピルは、元々避妊のために開発された合成ホルモン剤です。子宮内膜を非常に薄く保つ働きがあります。プロゲステロンが多く含まれており、子宮体がんの発症リスクを抑えられることが期待できます。
デメリットとして軽い吐き気や頭痛、生理周期途中に起こる軽度な出血といった副作用があります。
子宮体がんの治療経過(合併症・後遺症)
基本的には手術が必要である。進行の程度によって術式は変わります。早期であれば治癒の可能性もあります。
子宮体がんは早期に発見し、治療しなければ、命に関わる病気です。とくに遠隔転移がおこるとリンパ節や肺にも転移するため、完治は難しくなります。
子宮を全摘出することで再発や転移の可能性はなくなります。しかし妊娠ができなくなるため、十分な理解と検討が必要な病気です。
遠隔転移をしてしまうと急激に生存率が低下します。初期症状に早く気づき、検査や治療をおこなう必要があります。
遠隔転移(えんかくてんい)
遠隔転移は、ある器官(例えば子宮内膜)でがん細胞が発生していたのに、リンパや血液を通して他の部位に転移してしまうことです。
子宮体がんでは特にリンパ節、腟、腹膜、肺に転移します。転移すると、本来がん細胞があった場所以外にも治療する時間と体力が必要となります。
さらに転移と治療がいたちごっことなると、次第に手のつけようがなくなり、命に関わってくるようになります。
不妊
子宮体がんの治療には子宮全摘出術という手術があります。名前の通り、子宮をすべて摘出することでがんを取り除くため、転移していない限り再発の危険性が少なくなります。
しかし、子宮を取り除くということは子どもをつくることができない身体になることを意味します。女性の尊厳に関わることでもあるので、十分に考えて手術を決断することが必要です。
合併症・後遺症
子宮体がんの手術による術後後遺症がおこる可能性があります。子宮やリンパを摘出する手術により、排泄などの障害やリンパの流れに影響が出て足にむくみがおこる可能性があります。
また、子宮を摘出することで女性ホルモンの分泌に影響が出て、更年期障害がおこることもあります。
主な術後後遺症は以下のとおりです。
1.排泄、排便障害
「広汎子宮全摘出術(こうはんしきゅうぜんてきしゅつしゅじゅつ)」という手術をしたあとにみられる後遺症です。手術の際に膀胱や排泄器官の神経を痛めてしまうと起こります。
尿意や便意を感じやすくなったり、尿漏れしたり、便秘になりがちになります。この後遺症は、自分で排尿や排便をコントロールできるようにリハビリすることで、ある程度克服可能です。
どうしても克服できない場合は、薬の服用や泌尿系の病気にかかっていないか検査をしてみましょう。
2.足のリンパ浮腫
リンパ節まで取り除く手術をおこなうと、リンパ液の流れが悪くなって足に溜まり、むくんでしまう症状です。
定期的にマッサージ(リンパドレナージ)をしたり、締め付けのあるストッキング(弾性ストッキング)を穿いたりするのがこの症状を抑える方法です。
3.更年期障害
卵巣まで切り取る手術をすることでエストロゲン、プロゲステロンの分泌が減少します。それに伴う後遺症として挙げられるのが、更年期障害です。
ホルモンバランスが崩れ、ほてりや発汗、イライラ、倦怠感、めまい、動悸といった症状が出ます。
ホルモン補充療法によって女性ホルモンを補う治療が可能ですが、エストロゲンが増えるため、同じくエストロゲンが原因で起こる乳がんのリスクが高まることに注意が必要です。
子宮体がんになりやすい年齢や性別
年間約13,000人。40~60歳代に多いです。20~30代も増加傾向にあります。
子宮体がんの各種統計
「国立がん情報センター がん情報サービスの統計」によると以下のようなデータが報告されています。
・罹患(りかん)者数(2013年)
13,004人(女性の全がん患者数、約36万人中)
・罹患率(2013年)
10万人に対して19.9人(40~44歳から16.3人 、 45~49歳28.6人、50~54歳47.3人、55~59歳 51.2人、60~64歳38.8人、65~69歳32.1人)
罹患者数、罹患率データをみてみると、罹患者数は全体からみて少なく思えますが、女性がなるがんの種類では第5位の罹患者数です。
また、罹患率は50~60代がピークとなります。出産適齢期といわれる20代ではなく、年齢を重ねた人が発症していることが分かります。
・死亡数(2015年)
2,322人(女性の全がん患者死亡者数、約15万人中)
・死亡率(2015年)
10万人に対して3.6人
・5年生存率(2006~2008年)
81.1%(限局94.7%、領域(リンパまで)71.2%、遠隔転移している場合は20.1%に落ち込んでいる)
・10年生存率(2002~2006年追跡)
75.6%(限局91.5%、領域(リンパまで)55.1%、遠隔転移17.4%)
死亡率が10万人に対して3.6人と数値が低く、5年生存率は81.1%と高い数値を示しています。
しかし、遠隔転移(他の器官にがん細胞ができてしまうこと)をすると生存率が20%台に落ち込んでいます。また、10年生存率までみても、75.6%、遠隔転移をしてからは17.4%とさほど数値に変化はありません。
このデータにより、子宮体がんは、遠隔転移をしていなければ長期にわたって生存できる可能性がある病気といえます。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
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