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あすぺるがーしょうこうぐんアスペルガー症候群

えーえすでぃー/じへいすぺくとらむしょうASD/自閉スペクトラム症
更新日:2022/08/16 公開日:2019/01/30 view数:76,478

アスペルガー症候群は発達障害の1つで、広い意味での「自閉症」に含まれます。狭い意味の自閉症と区別するために「高機能自閉症」と呼ばれることもありました。

自閉症は、「社会参加・対人関係の困難」「コミュニケーション障害」「限定的な興味・行動」を特徴とする発達障害です。

一方、健常者と自閉症、高機能とそれ以外の間に境界線を引くことができないため、現在では自閉スペクトラム症(ASD)としてひとまとめにするようになり、アスペルガー症候群という診断は使われなくなってきています。

発達障害とは、生まれつき脳の発達が普通と異なっているため幼児期のうちから症状があらわれ、通常の育児や教育では社会適応がうまくいかないことがあるものです。

アスペルガー症候群のほかにも、ADHD(注意欠如・多動性障害)LD(学習障害)などが広く知られています。ADHDは「注意力散漫で突発的な行動や多動が目立つ」、LDは「特定分野の学習において習得能力が低い」などの特徴を有します。

自閉症の特徴でも簡単に触れましたが、アスペルガー症候群の特徴は次の3つです。

1.社会参加・対人関係の困難

臨機応変な対応を苦手としており、一度決めた計画を変えようとしない傾向があります。状況の変化についていけず、対応が遅れることもしばしばです。

「予想外の状況になった場合、対応能力の限界が普通より低い」と考えてください。

また、経験則を重視する傾向があり、「過去にうまくいった方法」にこだわります。そのため、予測していた出来事には対処できる反面、未経験の物事に強い不安を覚えます。多くの場合、はじめて訪れる場所、はじめて知り合った人も苦手です。

そのほか、率直な言葉を使う傾向があり、対人関係に大きなハンデを抱えがちです。

たとえば、あまり気に入らない贈り物を受け取ったときに「別に欲しくない」と発言したり、似合わない服を着ている人に「センスがないね」と伝えてしまったりします。本人に悪意はなく、思ったことを正直に表現しているだけですが、対人関係を構築する上では不利に働くでしょう。

2.コミュニケーション障害

コミュニケーション力が低く、「行間を読む」のが苦手です。

たとえば、外出している家族から「庭に洗濯物を干してあるけど、雨が降らないか心配」という電話が来たとします。この内容には恐らく「雨が降りそうなら、洗濯物を取りこんで欲しい」という意味が含まれているはずです。

しかし、アスペルガー症候群の人は「言外の意味」を見落とす確率が高くなります。そのため、「雨が降りそうかどうかを確認して、必要なら洗濯物を取りこむ」という行動は取らないかもしれません。

また、相手の感情を理解することも苦手としています。
たとえば、人が何を考えているかを推測するのが苦手です。はっきりと言葉で伝えられなければ、相手が喜んでいるのか、嫌がっているのかを理解できないこともあるでしょう。表情・口調・身振りなどから相手の気持ちを読みとる能力に欠けているからです。

また、自分の考えにしか意識が向かず、「ひたすら相手を質問攻めにする」といったコミュニケーションを図ることもあります。

人との適切な距離を測ることが苦手だからです。しかし、必ずしも言葉を使うのが不得手とは限りません。「会話のキャッチボールは成立しないが、文章を書くのは得意」「双方向の会話はしどろもどろだが、一方的にしゃべるプレゼンは得意」といった人もいます。

コミュニケーションにおける特徴も、人によってさまざまです。

3.限定的な興味・行動

狭い範囲の物事に対して、強い興味を持つ傾向があります。熱中した物事に対しては、しばしば通常限度を超えた集中力を発揮します。興味の対象には個人差がありますが、「規則性・法則性のある物事」に熱中する例が多いとされています。

たとえば、興味のある物事には圧倒的な記憶力を発揮する人もいます。「大量の情報を記憶する」「一読しただけの内容をほとんど暗記する」などの行動で、人を驚かせることがあります。

一方、自分のやり方にこだわりを持っていて、やり方を変更すると混乱をきたす場合があります。「自分の中にあった規則性・法則性から外れたとたん、まったく能力を発揮できなくなる」という人もいます。

そのほか、「普通の人があまり興味を持たない物品をコレクションする」「特定の行動を延々と繰り返す」など、限定された物事に強い関心を持つ人もいます。

4.定義は不明瞭

アスペルガー症候群の定義・分類はいくつもの見解があり、厳密に統一されているわけではありません。

世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類第10版(ICD-10)」では、広汎性発達障害の1つとしてアスペルガー症候群が定義されています。

一方、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、アスペルガー症候群という診断名が廃止されました。自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といった分類がなくなり、自閉症の系統すべてが「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになっています。

実際、「どこまでがアスペルガー症候群で、どこからが自閉症なのか」といった境界線を引くことは困難です。それどころか、「どこまでが健常で、どこからが自閉症か」を区分することも簡単ではありません。

「コミュニケーションが苦手な健常者」と「それなりにコミュニケーションが取れるアスペルガー症候群」の区別さえ、明確にはなっていないからです。そこで、最近は自閉症の傾向全体を指して「自閉スペクトラム症」(ASD)と表現するのが一般的になってきています。

目次
  1. アスペルガー症候群の症状
  2. アスペルガー症候群の診療科目・検査方法
  3. アスペルガー症候群の原因
  4. アスペルガー症候群の予防・治療方法・治療期間
  5. アスペルガー症候群の治療経過(合併症・後遺症)
  6. アスペルガー症候群になりやすい年齢や性別

アスペルガー症候群の症状

アスペルガー症候群の典型的な特徴は、主に次の3つです。
・社会参加の困難
・コミュニケーション障害
・限定的な興味・行動

ただし、年齢層によって「3つの特徴がどのように表面化するか」は変わってきます。そこで、年代ごとに異なる「アスペルガー症候群の特性」を解説します。

乳児期の特徴

0~1歳の段階でも、アスペルガー症候群の特徴が表面化することがあります。主に、次のような特徴が知られています。ただ、乳児の段階では、それほど過敏になる必要ありません。アスペルガー症候群の傾向が顕著に表れるのは「社会に参加してから(=幼稚園・保育園などに通うようになってから)」なので、乳児のときの行動だけで判断するのは困難です。あくまでも、参考程度と考えます。

視線を合わせない / あまり笑わない

「母親が目を合わせると視線を逸らす」「母親を見ても笑わない」など、母親に対して反応が薄い場合があります。

また、赤ちゃんは母親の動作を真似ることで、少しずつ社会性を身につける傾向(動作共鳴)がありますが、アスペルガー症候群をはじめとした自閉スペクトラム症の場合、動作共鳴をあまりおこなわない傾向があります。

特定のものだけに熱中する

通常、乳幼児は飽きやすく、さまざまな物事に関心が移ります。

しかし、自閉スペクトラム症の乳幼児は、特定のものに熱中する傾向があります。「同じオモチャで遊び続ける」「同じ本の特定のページばかり凝視(ぎょうし)する」などの特徴があれば、自閉スペクトラム症かもしれません。

幼児期の特徴

保育園・幼稚園に通うようになると、子どもの社会性が徐々に見えてきます。この時期から、アスペルガー症候群の特徴である「社会参加・対人関係の困難」が表面化しやすくなります。

1人で遊んでいることが多い

幼児期になると周囲で遊んでいる子どもたちの輪に入るのが普通ですが、自閉スペクトラム症の子どもは1人で遊ぶ傾向にあります。

「恥ずかしがり屋」というよりは、「周囲に関心を持たない」「そもそも、どうして良いのかわからない」といった反応を示します。

独特のコミュニケーション

「言いたいことだけを一方的に話す」「相手の言葉をオウム返しにする」「同じ言葉を何度も繰り返す」など、独特の言語感覚でコミュニケーションを図る場合があります。

何度も説明されないと、理解できない

自閉スペクトラム症の子どもは、「言われなくてもわかること」がほとんどありません。

通常、何度か怒られると同じような行動を取らなくなりますが、自閉スペクトラム症の場合、「なぜ怒られたのか」を理解しないことがあります。同じようなことでも、その都度、説明する必要があります。

小学校時代の特徴

小学校に入学してからは、「社会参加・対人関係の困難」「コミュニケーション障害」が顕著になってきます。また、学校の成績などにも、アスペルガー症候群の特徴があらわれる場合があります。

協調性が低く、孤立する

小学校くらいになると、「相手の気持ちを理解できず、和を乱す発言をする」「周りと同じ行動を取らず、自分の思ったとおりに行動する」などの特徴が表面化する場合があります。特に小学校高学年になると、周囲の社会性が向上してくる時期です。

低学年なら問題にならなかった言動でも、ケンカ・いじめの要因になるかもしれません。また、周囲に関心を持たず、1人で遊んでいるうちに孤立する子どももいます。

得意不得意の差が激しい

自閉スペクトラム症の子どもは、「興味のある科目はずばぬけて得意な反面、苦手な科目はまったくできない」など、極端な成績を取ることがあります。興味のある物事に熱中し、ほかの物事に関心を持たない傾向があるためです。

体育を極端に苦手とする

アスペルガー症候群をはじめ、自閉症スペクトラムの子どもは「手先が不器用」「細かい動きが苦手」といった特徴を持っていることがあります。そのため、あまり運動は得意ではありません。コミュニケーションが苦手なこともあり、特に球技などのチームスポーツを極端に苦手としている場合があります。

中高生時代の特徴

中高生になると、周囲の考え方も大人に近づいてきます。「対人関係・社会参加の困難」「コミュニケーション障害」により、周囲との溝を感じる機会も増えるようになります。

友達ができない / 不登校

小学校までは、(多くの場合は)周囲から浮いていても一定の友人関係が成立していました。実際、小学生時代は「家が近いから何となく一緒に遊んでいた」などの理由で簡単に友達ができる時期です。

しかし、中高生になると、周囲も「人に対する好き嫌い」が明確になります。そのため、自閉スペクトラム症の子どもは、友人関係を維持するのが困難になります。いじめ・不登校につながる恐れもでてきます。

苦手分野の学習困難

中高生になると、学校の授業もレベルが上がってきます。そのため、苦手分野に関してはまったく理解できなくなる場合もあります。

一方、得意分野に関しては目を見張るような成績を取ることがあるので、この時期に得意分野を伸ばすと将来が開ける可能性があります。周囲が自閉スペクトラム症を理解し、「得意なことを仕事にする方向」で指導すれば、将来的な社会参加にポジティブな影響が出る可能性があります。

成人期

大人になると、今まで許されてきたことのほとんどが許されなくなるので、自閉スペクトラム症の人はさまざまな困難に直面します。

マルチタスクを抱えると計画が破綻する

自閉スペクトラム症の人は「物事の優先順位」をうまく理解できないことがあります。そのため、マルチタスクを課されると段取りができず、仕事がほとんど進まなくなる人もいます。

周囲とのコミュニケーションが取れない

社会人になると、「コミュニケーション障害」の影響が大きくなります。周りとの関係をうまく構築できず、仕事が続けられなくなる人もいます。必要に応じて職場に事情を説明し、「一定の理解を得る」「苦手分野の業務を避けられる状況にする」などの対処が必要になります。

アスペルガー症候群の診療科目・検査方法

子どもの様子を見て発達障害の可能性を感じた場合は、早めに専門機関を受診しましょう。

診療科目としては精神科心療内科となりますが、一般の精神科心療内科では確定診断できない場合もあります。

アスペルガー症候群をはじめとした発達障害は診断が難しく、発達障害を専門とする精神科医師に診断してもらう必要があります。

アスペルガー症候群は精神科医師でも診断が難しいです。両親が自己診断するのは禁物です。アスペルガー症候群の可能性を感じた場合や発達障害の疑いを指摘された場合は、適切な窓口に相談してください。

・市町村の保健センター
・自治体の保健福祉課
・児童相談所
・子育て支援センター
・発達障害者支援センター

相談の結果、アスペルガー症候群の疑いが強まったら、早めに医療機関に相談します。早期発見・早期療育をおこなえば、社会参加の可能性は広がります。本人はもちろん、周囲の家族の「生きづらさ」を軽減する上でも役立つことが期待できます。

子どもの診断

「生まれてからの成長過程」「言葉を話し始めたときの様子」など、出生から現在までの過程を質問されます。可能なら、以下のような資料を用意しておきます。

・母子手帳の検診結果
・幼稚園 / 小学校 / 中学校の通知表
・学校の先生が書いた連絡帳など

学校での様子など、個性を客観的に知るための資料があると、診断の役に立ちます。

そのほか、必要に応じて心理検査・発達検査がおこなわれます。言語理解能力・知覚推理能力・ワーキングメモリー(作業中の記憶保持能力)・処理速度を総合的に検査する「WISC-Ⅳ」などが知られています。

成人の診断

成人の発達障害に関しては、より診断が難しくなります。診療科目としては精神科心療内科の守備範囲ですが、実際に大人の発達障害を得意としている精神科医師はあまり多くありません。「成人の発達障害」を専門的に扱う医療機関は少なく、予約が数か月待ちになっている場合も多くあります。

子どもの頃の様子がカギになるので、両親と一緒に受診するか、「幼少期の様子」をメモなどにまとめておくと良いでしょう。問診のほか、「WAIS-4」と呼ばれる発達検査で「言語性IQ」「動作性IQ」を測定し、確定診断するのが一般的です。

アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群を含めた自閉スペクトラム症の原因は、今のところ特定されていません。遺伝的要因があることはわかっています。

一卵性双生児における一致率が高いこと、複数の家系を対象とした研究から標的遺伝子領域の候補がいくつか示唆されており、それらには神経伝達物質受容体(セロトニンおよびγ-アミノ酪酸[GABA])や中枢神経系の構造制御(HOX遺伝子)と関係する領域が含まれています。

環境的な原因が疑う研究がいくつかありますが,証明されたものはありません。近年、自閉スペクトラム症や発達障害として診断される方が増えましたが、これは発達障害に対する啓発活動が進んだこと、診断基準が変更されたことによると考えられています。

予防接種が自閉症を引き起こすことはないという強固なエビデンスがあります。予防接種との関連性を示唆した主要研究は、著者がデータを不正に扱ったことが後から判明したために撤回されています。

アスペルガー症候群の予防・治療方法・治療期間

現代の医学において、アスペルガー症候群をはじめとする自閉スペクトラム症を治癒させることはできません。ただ、早期からの療育によって「アスペルガー症候群に起因する困りごと」を減らすことは可能です。

社会参加における障害を減らし、長所を伸ばす教育(=療育)をすることで、将来的な不自由を軽減することは、十分に可能と考えられています。療育における主なトレーニングには、以下のようなものがあります。

1.TEACCH

自閉スペクトラム症の子どもは、予測できない物事を苦手としています。そこで、勉強する場所、遊ぶ場所、落ち着く場所などをパーティションでわけて、「どこで何がおこるか」を理解できる環境を構築します。これを「物理的構造化」といいます。

また、言葉によるコミュニケーションが困難な場合、イラスト・図面などを活用して、コミュニケーションの練習をしていきます。これを「視覚的構造化」と呼びます。

TEACCHとは、自閉スペクトラム症の子どもが適応しやすい構造をつくり、そのなかで社会性・コミュニケーションを身につけていく療育方法です。

2.ABA

ABAは「応用行動分析」の略語です。行動分析学の観点では、人間の行動・心理的反応を「個人と環境の相互作用から生じるもの」と捉えます。

コミュニケーションについても通常発達の子どもなら誰でもできることではなく、適切な環境が用意されていてはじめてできるようになると考えます。

行動分析の専門家は、発達障害の人と周りの人の行動の傾向を分析し、「どのような行動に対して、どのように対応するのが望ましいか」を明らかにします。

重度の自閉症と診断された幼児でも、2,3歳までに動作模倣や絵カード、強化子などを使った訓練をおこなうことで通常発達の子どもに近いところまで言語能力を発達させることができます。

このような観点で、「周りがどのように対応すれば、問題を解決・緩和できるか」を考えていくやり方は、子どもだけでなく、成人の発達障害にも役立つと考えられています。

3.SST

SSTは「ソーシャル・スキル・トレーニング」の略です。

「対人関係・コミュニケーションの問題」を緩和し、社会生活に参加できるよう訓練します。本人にストレスを与えないように、「指示は具体的に与える」「感情的にならず、論理的にしかる」「なるべく褒めて伸ばす」といった方法を選択します。

訓練にあたっては、ゲーム、ディスカッションなどを通じて、「具体的な指示」「論理的な説明」のもと、人と関わる練習を繰り返します。周囲のサポートを受けながら、人と関わる訓練を続け、「社会のルール」「人の感情」を理解していくのが目標です。

薬物療法

アスペルガー症候群自体は、薬で緩和するものではありません。しかし、うつ病・強迫性障害などの二次障害がでている場合、二次障害に対しては薬物療法をおこないます。

アスペルガー症候群に起因して発生した精神疾患を治療することは、本人の「生きづらさ」を緩和することにつながります。

周囲の理解

アスペルガー症候群は先天的障害なので、予防方法・治療方法はありません。しかし、アスペルガー症候群に起因する「生きづらさ」を緩和することは可能です。原則として、周囲がアスペルガー症候群の特徴を理解し、長所を伸ばす方向で接します。

子どものうちに療育をおこない、社会参加をサポートしてあげれば、不自由の少ない生活を送る可能性も十分にあります。

指示はなるべく具体的にする

具体的な指示を出さないと、理解できないことが多くなります。「ちゃんとしなさい」ではなく「おしゃべりをやめて椅子に座りなさい」と指示するなど、「何をすれば良いのか」をピンポイントで伝えましょう。

基本的に言葉を省略しない

「あれを着て」ではなく「青いシャツを着て」など、言葉を省略せずに伝えます。人によっては、「2人で話しているときさえ、名前を呼ばれないと自分に話しているのかどうか理解できない」という場合もあります。なるべく言葉を省略せず、名前・特徴をあげて話すようにしましょう。

アスペルガー症候群の治療経過(合併症・後遺症)

アスペルガー症候群は病気ではなく、脳の発達が普通と異なる「先天的脳障害」です。そのため、アスペルガー症候群に対する治療法は存在しません。

アスペルガー症候群に対しては、「早い段階から適切な支援をおこなうこと」が求められます。本人のできる範囲で「対人関係の構築方法」「社会への順応」を図ります。

子どものときに適切な支援をおこなえば、将来的な社会参加の幅が広がり、「うつ病」「PTSD」などの二次障害リスクも減少します。

アスペルガー症候群をはじめ、発達障害で苦労するのは本人だけではありません。普通と違うコミュニケーションを図る傾向があるので、周囲もまた、アスペルガー症候群の人を理解するのに苦労することが多くなります。

そのため、本人ではなく、近しい関係の人(特に配偶者)がストレスを抱えこんで心身症を発症する場合があります。

二次障害

アスペルガー症候群をはじめ、発達障害の人は二次障害に注意が必要です。二次障害は、大きくわけて次の2種類が考えられます。

・アスペルガー症候群の特徴が強く表面化する
・アスペルガー症候群による「生きづらさ」が、別の疾患をもたらす

アスペルガー症候群そのものは「個性」と捉えることもできますが、二次障害に関しては適切な治療をおこなうことができます。主な二次障害としては、次のような疾患があげられます。

1.うつ病

周囲に溶け込めないなど、アスペルガー症候群による「生きづらさ」が長く続くと、うつ状態(うつ病)を発症する恐れがあります。「自分は社会に適応できない」と自己評価が低下し、抑うつ状態に陥ります。

2.社会不安障害/社交不安障害

社交不安症も、発達障害の「生きづらさ」がもたらす疾患の1つです。人と同じように振る舞えないことで「周囲にからかわれた・いじめられた」などの経験が引き金になることもあります。「大勢の前で話ができない」「電話に出るのが怖い」など、対人恐怖症のような症状があらわれます。

3.PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDは、大きな恐怖・ストレスを受けたことで、「恐怖体験がフラッシュバックする」「強い警戒心を持つようになる」といった症状です。発達障害を要因とする「いじめ・虐待」の経験がある場合、その記憶がトラウマとなってPTSDを発症する例があります。

4.睡眠障害

アスペルガー症候群に起因する「生きづらさ」を抱えていると、慢性的にストレスを受けた状態になります。代表的な心身症である「不眠症・睡眠障害」を発症する例も珍しくありません。

5.強迫症/性障害

強迫性障害は(客観的に見れば無意味・有害な)行動を繰り返してしまう病気です。アスペルガー症候群の特徴として「狭い範囲への強いこだわり」がありますが、特有のこだわりが病的に表面化すると、強迫性障害に至る恐れがあります。

合併しやすい症状

二次障害以外にも、アスペルガー症候群の人が併発しやすい病気・症状が存在します。主な合併症としては、次のようなものが挙げられます。

てんかん

「アスペルガー症候群の1割程度がてんかんを併発している」と考える人もいます。てんかんは、「手足が痙攣する」「突然、意識を失う」などの「てんかん発作」を特徴とします。

ある程度、薬でコントロールできますが、就労・自動車運転などで制約を受けるなどQOL(生活の質)維持が難しい場合もあります。

トゥレット症候群

トゥレット症候群の特徴は、身体の一部が本人の意思と関係なく動く「チック症状」です。

ドーパミンをはじめとする神経伝達物質の異常が原因とされています。身体の一部をピクピク動かすほか、「咳払いをする」「顔をしかめる」などのチック症状をきたす場合もあります。多くの場合、強迫症も合併します。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

「注意力が低く、じっとしていられない」などの特徴を有する発達障害です。複数の発達障害を併発することも多く、自閉スペクトラム症を持っている子どもがADHDの特徴を併せ持つ例も珍しくありません。

LD(学習障害)

「特定分野を学習するにあたって、習得能力が低い」などの特徴があります。これも発達障害の一種です。ただ、知能に問題があるわけではなく、不得意分野を除けば、普通以上の能力を示すこともあります。アスペルガー症候群などの自閉スペクトラム症と併発する例も多く見られます。

アスペルガー症候群になりやすい年齢や性別

アスペルガー症候群の定義は不明瞭です。そのためアスペルガー症候群の発症率について、明確な情報はありません。

「自閉スペクトラム症」全体の発症率については最近では約100人に1~2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。

執筆・監修ドクター

原井 宏明
原井 宏明 医師 原井クリニック 院長 担当科目 精神科/心療内科

経歴1984年 岐阜大学医学部卒業,ミシガン大学文学部に留学(文化人類学専攻)
1985年 神戸大学精神科で研修
1986年 国立肥前療養所に就職,山上敏子先生から行動療法を学ぶ
1998年 国立菊池病院に転勤。精神科医長、うつ病や不安障害,薬物依存の専門外来と治験などを担当
2000,2001年 ハワイ大学精神科アルコール薬物部門に留学
2003年 臨床研究部長
2007年 診療部長
2008年 医療法人和楽会なごやメンタルクリニック院長
2013年 ハワイ大学精神科臨床准教授
2018年 千代田心療クリニック非常勤医師、BTCセンター・カウンセラー
2019年 原井クリニック開業

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