アスペルガー症候群

アスペルガー症候群の説明

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群は、発達障害の1つで、広い意味での「自閉症」に含まれます。

発達障害とは「生まれつき、脳の発達が普通と異なる」という意味です。アスペルガー症候群のほかにも、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害)などが広く知られています。ADHDは「注意力散漫で突発的な行動が目立つ」、LDは「特定分野の学習において習得能力が低い」などの特徴を有します。

次に自閉症は、「社会参加・対人関係の困難」「コミュニケーション障害」「限定的な興味・行動」を特徴とする発達障害です。自閉症の人にもさまざまな個性があり、知能指数にも個人差があります。自閉症のうち、知能指数が「普通」または「普通より上」のケースを「アスペルガー症候群」といいます。別名で「高機能自閉症」と呼ぶこともあります。

一方、知能指数が普通に満たない自閉症を「カナー症候群」と呼びますが、こちらは単に自閉症と表現することが多くなります。

以上から、アスペルガー症候群は、「知能指数が普通以上の自閉症である」とまとめることができます。

アスペルガー症候群の「3つの特徴」とは?

自閉症の特徴でも簡単に触れましたが、アスペルガー症候群の特徴は次の3つです。

▼社会参加・対人関係の困難

臨機応変な対応を苦手としており、一度決めた計画を変えようとしない傾向があります。状況の変化についていけず、対応が遅れることもしばしばです。「予想外の状況になった場合、対応能力の限界が普通より低い」と考えてください。

また、経験則を重視する傾向があり、「過去にうまくいった方法」にこだわります。そのため、予測していた出来事には対処できる反面、未経験の物事に強い不安を覚えます。多くの場合、はじめて訪れる場所、はじめて知り合った人も苦手です。

そのほか、率直な言葉を使う傾向があり、対人関係に大きなハンデを抱えがちです。たとえば、あまり気に入らない贈り物を受け取ったときに「別に欲しくない」と発言したり、似合わない服を着ている人に「センスがないね」と伝えてしまったりします。本人に悪意はなく、思ったことを正直に表現しているだけですが、対人関係を構築する上では不利に働くでしょう。

▼コミュニケーション障害

コミュニケーション力が低く、「行間を読む」のが苦手です。

たとえば、外出している家族から「庭に洗濯物を干してあるけど、雨が降らないか心配」という電話が来たとします。この内容には恐らく「雨が降りそうなら、洗濯物を取りこんで欲しい」という意味が含まれているはずです。しかし、アスペルガー症候群の人は「言外の意味」を見落とす確率が高くなります。そのため、「雨が降りそうかどうかを確認して、必要なら洗濯物を取りこむ」という行動は取らないかもしれません。

また、相手の感情を理解することも苦手としています。

たとえば、人が何を考えているかを推測するのが苦手です。はっきりと言葉で伝えられなければ、相手が喜んでいるのか、嫌がっているのかを理解できないこともあるでしょう。表情・口調・身振りなどから相手の気持ちを読みとる能力に欠けているからです。

また、自分の考えにしか意識が向かず、「ひたすら相手を質問攻めにする」といったコミュニケーションを図ることもあります。人との適切な距離を測ることが苦手だからです。しかし、必ずしも言葉を使うのが不得手とは限りません。「会話のキャッチボールは成立しないが、文章を書くのは得意」「双方向の会話はしどろもどろだが、一方的に喋るプレゼンは得意」といった人もいます。コミュニケーションにおける特徴も、人によってさまざまです。

アスペルガー症候群の特徴

▼限定的な興味・行動

狭い範囲の物事に対して、強い興味を持つ傾向があります。熱中した物事に対しては、しばしば通常限度を超えた集中力を発揮します。興味の対象には個人差がありますが、「規則性・法則性のある物事」に熱中する例が多いとされています。

たとえば、興味のある物事には圧倒的な記憶力を発揮する人もいます。「大量の情報を記憶する」「一読しただけの内容をほとんど暗記する」などの行動で、人を驚かせることがあります。

一方、自分のやり方にこだわりを持っていて、やり方を変更すると混乱をきたす場合があります。「自分の中にあった規則性・法則性から外れたとたん、まったく能力を発揮できなくなる」という人もいます。

そのほか、「普通の人があまり興味を持たない物品をコレクションする」「特定の行動を延々と繰り返す」など、限定された物事に強い関心を持つ人もいます。

アスペルガー症候群の定義は不明瞭

アスペルガー症候群の定義・分類はいくつもの見解があり、厳密に統一されているわけではありません。

世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類第10版(ICD-10)」では、広汎性発達障害の1つとしてアスペルガー症候群が定義されています。

一方、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、アスペルガー症候群という診断名が廃止されました。自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といった分類がなくなり、自閉症の系統すべてが「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれるようになっています。

実際、「どこまでがアスペルガー症候群で、どこからが自閉症なのか」といった境界線を引くことは困難です。それどころか、「どこまでが健常で、どこからが自閉症か」を区分することも簡単ではありません。「コミュニケーションが苦手な健常者」と「それなりにコミュニケーションが取れるアスペルガー症候群」の区別さえ、明確にはなっていないからです。そこで、最近は自閉症の傾向全体を指して「自閉症スペクトラム」と表現するのが一般的になってきています。

アスペルガー症候群の発症率

前述したとおり、アスペルガー症候群の定義は不明瞭です。なので、アスペルガー症候群の発症率について、明確な情報はありません。

ただ、自閉症のほか、「分類の難しい広汎性発達障害」を含めた「自閉症スペクトラム障害」全体の発症率なら、数値を出すことができます。「独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所」の資料によれば、成人の自閉症スペクトラム障害は1.0%の有病率です。つまり、「成人の100人に1人は自閉症スペクトラム障害」という意味になります。

有病率には性差(性別による違い)があり、「男性1.8%、女性0.2%」でした。以上から、「男性は、女性の9倍、自閉症スペクトラム障害を発症しやすい」という統計が出ていることがわかります。

【参考】
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所
『成人期の発達障害の臨床的問題』

アスペルガー症候群は完治するのか?

アスペルガー症候群は病気ではなく、脳の発達が普通と異なる「先天的脳障害」です。そのため、アスペルガー症候群に対する治療法は存在しません。

アスペルガー症候群に対しては、「早い段階から適切な支援をおこなうこと」が求められます。本人のできる範囲で「対人関係の構築方法」「社会への順応」を図るわけです。子供のときに適切な支援をおこなえば、将来的な社会参加の幅が広がりますし、「うつ病」「PTSD」などの二次障害リスクも減少します。このような「子供のときからの適切な支援」を「療育(りょういく)」と呼びます。

板東浩先生
 【監修医】医学博士 / 内科医: 板東浩 先生
 1957年生まれ。
 1981年 徳島大学を卒業。
 ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
 抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。
 
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病気スコープ編集部
2017年12月22日

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