きょうしんしょう狭心症
狭心症の症状
息切れや胸が締め付けられるように痛くなる、同時に歯が痛む、肩が痛むなどの放散痛を伴うこともあります。
狭心症の診療科目・検査方法
疲れやすく、軽労作で息切れのある場合は循環器内科を受診が必要です。
心電図、運動負荷心電図、薬物負荷心臓エコー、薬物・運動負荷心筋シンチグラフィ(※3)、冠動脈CT、カテーテル(※4)による冠動脈造影などの検査を行います。
狭心症の原因
狭心症の予防・治療方法・治療期間
すべての狭心症患者さんに薬物療法をおこなうのが原則です。
冠動脈に狭窄を認める場合には、病変の重症度によりカテーテル治療もしくはバイパス術(※5)が行われます。
薬物療法は生涯継続、一般にはカテーテル治療入院は3泊4日、バイパス術は10~14日間の入院を要することが多いです(入院期間の目安は、執筆医の経験則によるもの)。
狭心症の治療経過(合併症・後遺症)
根治は難しいが、治療を続けることで症状をやわらげることは可能です。
再発予防が重要です。
狭心症になりやすい年齢や性別
動いたときに狭心症の症状が現れる労作性狭心症の場合、男性は1000人あたり11.8人、女性は1000人あたり9.7人(調査対象2558人に対し)です。
中年以降の男性に多く発症している傾向にあり、女性は男性より年齢が遅めに発症します。
編集部脚注
※1 冠動脈
冠動脈は、「心筋(心臓の筋肉)」に酸素・栄養を届ける血管です。
「動脈が酸素・栄養を届けること」を「栄養する」と表現します。
「冠動脈は心筋を栄養する血管である」といった使い方をします。
右側の心筋を栄養するのが「右冠動脈」、左側を栄養するのが「左冠動脈」です。
左冠動脈は、「左冠動脈前下行枝(さかんどうみゃく-ぜんかこうし)」と「左冠動脈回旋枝(さかんどうみゃく-かいせんし)」に分岐します。
左冠動脈前下行枝は「左側前面の心筋」を栄養し、左冠動脈回旋枝は「背面側の心筋」を栄養しています。
冠動脈の内部が狭まると、血液が流れにくくなります。
その結果、心筋が酸素不足・栄養不足に陥るのが「狭心症」です。
もし、冠動脈が完全に詰まると、詰まった箇所から先の心筋は壊死します。
酸素・栄養が届かないからです。この状態に陥ると「心筋梗塞」と呼ばれます。
狭心症・心筋梗塞の2つを合わせて、「虚血性心疾患(きょけつせい-しんしっかん)」と総称します。
※2 脂質代謝異常症
脂質代謝異常症は、「血液中のコレステロール量、中性脂肪量に問題が生じること」を意味します。
具体的には「空腹時採血検査」の結果、
・LDLコレステロールが140mg/dL以上
・HDLコレステロールが40mg/dL未満
・トリグリセライドが150mg/dL以上
のいずれかを満たすと、脂質代謝異常症に該当します。
LDLコレステロールは「低比重リポタンパク(Low Density Lipoprotein)」を指しています。
世間一般では「悪玉コレステロール」という俗称が知られています。
HDLコレステロールは「高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein)」です。
一般的には「善玉コレステロール」と呼ばれています。
トリグリセライドは中性脂肪を指します。
※3 心筋シンチグラフィー
心筋シンチグラフィーは、「心筋への血流を評価するための検査方法」です。
まず、放射性同位元素(タリウム-201、テクネチウム-199mなど)を注射して、血液中に放射性物質を入れます。
タリウム-201、テクネチウム-199mは、冠動脈から(酸素、栄養分などと同じく)心筋細胞に入る性質があります。
つまり、冠動脈の血流が十分なら、相当量の放射性同位元素が心筋細胞に入るはずです。
以上から、「放射性同位元素を注射したあと、心筋の放射性同位元素が発する放射線を観測する」という方法が役立ちます。
心筋全体から放射線が出ているなら、「冠動脈全体に十分な血流がある」と評価できるからです。
逆に、放射線の出ていない部位があるなら、「血液が行きわたらない箇所がある」とわかります。
このような方法を用いて、冠動脈の血流を評価する検査が「心筋シンチグラフィー」です。
血管それ自体ではなく、「心筋細胞の栄養状態から冠動脈の状況を評価する」という検査になります。
心筋シンチグラフィーには、「安静シンチグラフィー」と「負荷シンチグラフィー」が存在します。安静時に検査するか、運動で負荷をかけて検査するかの違いです。
冠動脈が狭くなっている狭心症の場合、「安静時は血流が十分だが、負荷をかけると血流が低下する」という検査結果が出ます。
冠動脈が詰まる心筋梗塞の場合、「安静、負荷のどちらでも血流が途絶えている」という検査結果になります。
体力的に運動負荷をかけるのが難しい患者さんでは、薬剤を用いて負荷をかける方法をとります。
※4 カテーテル
カテーテルは、「直径2~3mm、長さ1m前後の管」です。
心臓や冠動脈の検査・治療に用いられます。
冠動脈の検査・治療をおこなう場合、動脈の中を通して冠動脈まで進めます。
普通は、「太ももの動脈(大腿動脈)」「ひじの動脈(上腕動脈)」「手首の動脈(橈骨動脈)」からカテーテルを挿入します。
冠動脈のカテーテル検査では、「冠動脈内に造影剤を注入する検査」が知られています。
造影剤を注入してからCT撮影をすると、血管の形状を詳細に知ることができます。
カテーテル治療では、「冠動脈形成術」「ステント留置術」が知られています。
冠動脈形成術は「カテーテルを狭窄部位に進め、カテーテルに付属の風船(バルーン)を膨らませる治療法」です。
狭くなった血管を押し広げて血流を回復させます。
ステント留置術は「カテーテルを狭窄部位に進め、ステント(網状の金属器具)を設置する治療法」です。
再び狭まることがないように、金属器具で血管を支えます。
※5 バイパス術
バイパス術は、「冠動脈の狭窄部位・閉塞部位を迂回するための血管をつくる手術」です。
狭心症や心筋梗塞では、冠動脈の一部が狭窄・閉塞します。
その結果、冠動脈の血流が妨げられます。
たとえば、「A⇒B⇒C」と血液が流れている状態で、Bの部位が詰まったと考えてください。
この状態では、Cに血液が流れません。
そこで、直接「大動脈⇒C」に流れる血管(Bを通らない迂回路)を用意します。
「内胸動脈」「胃大網動脈」「橈骨動脈」「大伏在静脈」のいずれかを移植して、迂回路をつくります。
動脈を使った迂回路を「動脈グラフト」、静脈を使った迂回路を「静脈グラフト」と呼びます。
ただし、静脈グラフトは「手術から10年後の開存率(閉塞を起こさず、バイパスが開通している確率)」が低いことがわかっています。
そのため、近年は動脈グラフトを選択するのが一般的です。
特に内胸動脈を用いた冠動脈バイパスは、長期的な開存率に優れています。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 近畿大学医学部卒業
東京都老人医療センター(現:健康長寿医療センター)初期研修医
2008年 独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 後期研修医
2010年 日本医科大学付属病院 循環器内科入局 同大学院生、久保田クリニック副院長
2014年 日本医科大学付属病院 循環器内科助教
関連する病気
狭心症以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。
関連カテゴリ
狭心症に関連するカテゴリはこちら。
関連コラム
「狭心症」に関するコラムはこちら。